大手術後の「全身の激しい炎症」を鎮める。麻酔科医・外科医が注目するSIRS抑制と早期離床の切り札
消化器の大規模ながん切除や心臓の手術など、患者にとって「大手術」は命を救うためのプロセスであると同時に、身体そのものに対して文字通り「命がけの凄まじいダメージ(侵襲:しんしゅう)」を与える行為でもあります。
手術が完璧に成功したとしても、術後数日間の間に患者の身体は強烈なストレス反応を起こし、痛みや発熱、臓器の機能低下に苦しみます。現在、こうした外科手術後のダメージを細胞レベルで食い止め、患者様が1日でも早く回復・退院できる(早期離床)ための切り札として、麻酔科および集中治療(ICU)の領域で「水素の抗炎症メカニズム」が本格的に研究・導入されています。
「切る」という行為が引き起こす、全身の免疫パニック
手術でメスが入り深く切り開かれた組織は、大量の「強毒性の活性酸素(酸化ストレス)」を発生させます。
これに反応して、患者の体内の免疫細胞はパニックを起こし、「全身に大量の炎症性物質(サイトカインなど)を放出して火事を知らせろ!」という過剰なサインを出してしまいます。
これを「全身性炎症反応症候群(SIRS)」と呼びます。術後の激烈な痛み、腸が動かなくなること、術後の急な認知機能の低下(せん妄)などは全て、この酸化ストレスと炎症の暴走が引き起こす負の連鎖なのです。
水素が術後の「サビと火事」を瞬時に消し去る
この全身の火事を消すために抗酸化剤や強いステロイドを使用すると、副作用や免疫力の低下(術後感染症のリスク)が心配されます。
そこで「善玉の免疫や活性酸素には一切触れず、病的な悪玉活性酸素だけを選択的に消す」という水素ガスの吸入が威力を発揮します。
大腸がんの手術などに関する周術期研究において、水素吸入を行うことで「術後の血中の炎症性サイトカイン」の急激な上昇が劇的に抑えられたことが報告されました。過剰な火事(酸化ダメージ)が起きないため、細胞が本来持つ「自然治癒力」が100%の力で患部の修復へ向かうことができます。
外科のメスが生んだ避けられないダメージを水素の力で極限まで和らげ、速やかに通常の生活へと患者を戻す(ERASプログラムの支援)。
水素吸入は、痛みを乗り越える術後患者にとっての「最強のサポーター」です。
【引用文献・エビデンス】
- 侵襲の大きな外科手術モデルおよび周術期の患者において、水素ガス吸入が全身性炎症反応症候群(SIRS)や臓器障害を抑制し、術後回復(早期離床や術後認知機能低下の防止)を促進する効果を示した麻酔科学および外科学の臨床研究・基礎論文群に基づく。