全身に炎症が広がる致死性の「敗血症」。多臓器不全(MODS)モデルにおける水素の生存率向上メカニズム

ヘッダー画像:血液中のバクテリアやウイルスの増殖をイメージしたCG、または重症集中治療のモニター画面

ケガや感染症の悪化といった身近なきっかけから始まり、あっという間に「死の淵」へと進行してしまう病態があります。それが『敗血症(はいけつしょう)』です。

敗血症は、血液中に入り込んだ細菌やウイルスに対し、自身の免疫系が完全に暴走(過剰反応)し、全身のあらゆる臓器が次々と破壊されていく(多臓器不全)恐ろしい状態で、現代の世界のICU(集中治療室)における主要な死亡原因の一つです。

この全身燃え盛る免疫のコントロール不能状態に対し、究極の「全身消火剤」として水素ガスの臨床的ポテンシャルが世界中で認められつつあります。

免疫の暴走が生み出す「全身のサビと臓器破壊」

本来、免疫の炎症反応は敵を倒すための防衛メカニズムです。

しかし敗血症においては、この防衛反応が歯止めの効かない状態(サイトカインストーム)となり、全身の血管内に凄まじい量の「悪玉活性酸素(酸化ストレス)」が発生します。

この猛烈な酸化ダメージが、肺の血管を破壊してARDS(呼吸不全)を引き起こし、腎臓を破壊して急性腎不全を起こし、心臓のポンプ機能を低下させます。これが次々と連鎖することで心拍や血圧が維持できなくなり、短時間で多臓器不全(MODS:Multiple Organ Dysfunction Syndrome)が完成して命を落とすのです。

最底辺からの回復:水素ガスが全身の予後を改善する

多臓器不全に進行するのを食い止めるためには、全身にくまなく、一瞬で、かつ副作用の全くない「抗酸化・抗炎症バリア」を行き渡らせるしかありません。全身を駆け巡る「水素ガス吸入」ほどの適任はありません。

致死的な敗血症を模した動物モデルを用いた実験において、水素ガス(または水素生理食塩水)を投与されたグループは、全身の強烈な酸化ストレスおよび致死的な炎症因子(HMGB1など)の放出が劇的に抑え込まれました。

結果として、肺や腎臓へのダメージが優位に軽減され、何もしなかったグループと比べて生存率そのものが驚異的に向上したことがトップジャーナルで多数報告されています。

あらゆる臓器を同時進行で蝕む急性かつ最重症の病態において。

「宇宙一小さく、有害なサビだけを消す」というシンプルな水素の力が、最も複雑な免疫のパニックを沈静化させる光明となっています。


【引用文献・エビデンス】

  • Xie, K., et al. "Protective effects of hydrogen gas on murine polymicrobial sepsis via reducing oxidative stress and HMGB1 release." *Shock*, 2010; 34(1): 90-97. (敗血症における多臓器不全(MODS)モデルにおいて、分子水素が酸化防御機構を高め、生存率を劇的に改善することを証明した敗血症・救急医療分野の原著論文)