先進医療Bとして世界を牽引。心停止後症候群(PCAS)の深刻な脳ダメージを軽減する水素吸入
街中で、あるいは自宅で突然倒れ、心臓が止まってしまう「心肺停止」。
AEDや救急隊の迅速な心臓マッサージによって奇跡的に鼓動が再開しても、決して安心はできません。心肺機能が停止していた数分間の間に、全身の臓器、とりわけ最も酸素を大量に消費する「脳」に計り知れないダメージが蓄積されるからです。
蘇生後に訪れるこの致命的な病態を『心停止後症候群(PCAS:ピーキャス)』と呼びます。
実はいま、日本の救急科(ICU)のトップ施設において、このPCASによる脳機能障害を防ぐために「水素ガス」が使用され、国が認める【先進医療B】として世界を牽引する医療革命を起こしています。
心拍再開の瞬間、脳を焼き尽くす「活性酸素の猛威」
脳に血が通っていない状態から、蘇生によって突然大量の血液(酸素)が流れ込むとどうなるか。
脳細胞のミトコンドリアが異常な反応を起こし、最も毒性の強い巨大な「悪玉活性酸素(ヒドロキシラジカル)」が嵐のように発生します。(虚血再灌流障害)
この猛烈な酸化ダメージが、蘇生したはずの脳細胞を完全に破壊し尽くし、患者様に重篤な植物状態(意識障害)や寝たきりの重度な麻痺といった絶望的な後遺症をもたらす最大の原因でした。
命の質を救う、日本発・世界初の「水素ガス吸入療法」
この救命救急の壁を打ち破るために開発されたのが、蘇生後の患者の人工呼吸器に2%の高濃度水素ガスを混ぜて脳内に送り込むというアプローチです。
宇宙最小の水素は全身や脳の奥深くまで一瞬で到達し、脳細胞を焼き尽くそうとしていた「悪玉活性酸素」だけを瞬時にキャッチして無害な水(H2O)に変え、強力無比な火消しを行います。
国内の多施設共同の大規模臨床試験(HYBRID II trial等)において、この水素ガス吸入を施された心肺停止後の患者群は、重度な後遺症を残すことなく自分の足で歩いて退院する(社会復帰率の向上)という、これまでの救急医療の常識を覆す生存率・回復指標が報告されています。
ただ「命を長らえる」だけではなく「生きる質と尊厳(QOL)」を家族のもとへ返すために。
水素は、救急医療の最前線でまさに人間の命を守る最期の盾として活躍しています。
【引用文献・エビデンス】
- Tamura, T., et al. "Efficacy of inhaled HYdrogen on neurological outcome following BRain Ischemia During out-of-hospital cardiac arrest (HYBRID II trial)." *Lancet eClinicalMedicine* 等。(日本全国の主要施設で行われた、院外心停止後症候群(PCAS)に対する水素ガス吸入療法の二重盲検ランダム化比較試験に基づく)