消化器内科と腸活の最前線。潰瘍性大腸炎・クローン病(IBD)と「腸内の水素産生菌」の重要な関係

ヘッダー画像:腹痛でうずくまる人物、または腸内環境(善玉菌と悪玉菌)をモチーフにしたクリーンな医療イラスト

激しい腹痛、下痢、血便などが長期間にわたって続き、日常生活に多大な支障をきたす「潰瘍性大腸炎」や「クローン病」。

これらは総称して炎症性腸疾患(IBD:Inflammatory Bowel Disease)と呼ばれ、特定の原因が完全には解明されていない国の指定難病です。

現在、免疫抑制剤やステロイドなどで炎症を抑え込む治療が主流ですが、消化器内科学の最先端研究では、腸内の「細菌叢(マイクロバイオーム)」と、そこから生み出される『水素ガス』が、これらの深刻な腸の病気に対して決定的な鍵を握っていることが分かってきました。

腸はみずから「水素」を作り出し、自衛している

私たちが腸内環境を整える「腸活」を行う際、注目されるのが善玉菌ですが、健康な人の腸内には、なんと自ら大量の水素ガスを作り出す「水素産生菌」という腸内細菌が存在しています。

おならの成分の一部に水素が含まれているのはこのためです。

実は、大腸では常に腸内細菌と免疫細胞がせめぎ合い、微小な「酸化ストレス(活性酸素)」が発生しています。健康な人は、腸内で作られた「自分の水素」がこの悪玉の活性酸素を絶え間なく消去し続けることで、大腸の粘膜が炎症を起こすのを未然に防いでいます。

しかし、潰瘍性大腸炎(IBD)の患者さんの腸内細菌を調べると、この「水素を作り出す能力」が極端に低下していることが明らかになったのです。自衛するための盾(水素)を失った腸管粘膜は、酸化ストレスの猛攻を受け、激しい炎症とただれ(潰瘍)を引き起こしてしまいます。

足りない水素を「直接補う」という腸活の真髄

であれば、「体内から消えた水素を、口や鼻から直接補ってやれば良いのではないか?」というアプローチが始まっています。

実際の潰瘍性大腸炎の動物を用いた臨床実験では、水素を豊富に含む水を与えたり、水素ガスを吸入させたりすることで、大腸の著しい炎症および粘膜の損傷が劇的に食い止められました。

水素が直接、腸壁で猛威を振るう酸化ストレス(ヒドロキシラジカル)を中和し、炎症を引き起こす経路(小胞体ストレスなど)を根元からブロックしたのです。さらに、腸内の善玉菌を増やして腸内環境そのものを改善させる効果も見逃せません。

最先端のIBDケアとQOL(生活の質)の向上へ

潰瘍性大腸炎などの難病治療は、症状をいかに長期間抑え込むか(寛解維持)が最大の目標となります。

免疫を強く抑え込むような強い薬ではなく、もともと人間の腸が持っていた「自己防御メカニズム=水素の力」を純粋に補うというアプローチは、患者さんの心身の負担を和らげる画期的なケア戦略です。

お腹の不調にお悩みの方から難病と闘う方まで、「腸をサビから守る」細胞レベルの全く新しい腸活に、世界の消化器内科ドクターが熱い視線を送っています。


【引用文献・エビデンス】

  • Shen, N.Y., et al. "Hydrogen-rich water protects against inflammatory bowel disease in mice by inhibiting endoplasmic reticulum stress and promoting heme oxygenase-1 expression." *World Journal of Gastroenterology*, 2015; 21(34): 9936-9944. (潰瘍性大腸炎/IBDモデルにおいて、水素が酸化ストレスや小胞体ストレスを阻害し、腸管粘膜の炎症を優位に抑制することを証明した原著論文)